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焼肉が美味しくなかった話

焼肉が美味しくなかった

今、わけがあって地元に戻っているのだがオミクロンの影響もあって娯楽が全くない。また、自分自身冬の寒さと陰気さにあてられてしまいガッツが湧かない日々を送っている。そんな中、かねてより1人焼肉に行きたいという非常にささやかな野望を持って何とか日々を乗り越えていたのだが、それがついに実現した。

 

自転車しか交通手段がないため、何度も何度もGoogle Mapでリサーチをした。田舎なので近所には焼肉屋があまりなかった。30分くらいかければかなり美味しそうな店もあるのだが、ランチをしている店はあまりない。しかし、今日は偶然の巡り合わせか29日(ニクの日)ということもあり、自分自身はモチベーションMax。ついにやってやるぞと言わんばかりに野望を叶えようとしていた。さながら、男子中学生が初めてエロ本をgetしようとしているのと同じくらいのモチベーションである。

 

夜であれば、かなり高額ではあるが確実に美味しいであろうお店を発見していた。しかし、家族連れも多い中1人で行くのは流石に憚られたためランチをしていないことを言い訳に、対象から除外した。そこで、ちょうど良い距離でランチもしている店に照準が合わせられた。そこはカルビを前面に打ち出している店だが、Google Mapの評価はあまり高くなかった。自分で言うのもなんだが、そこそこ良い焼き肉を食べてきているため不味い焼き肉は食べたくなかった。ただ、小学生の頃同じブランドの焼肉屋の別店舗に行ったことがあり、思い出補正もあったのか「なんとなくいけるんじゃないか」という気になっており、結局その「カルビを全面に出している焼肉屋」に行くことにした。しかも、現金であれば29の日なので30%金券がgetできるようだ。

 

日中だがかなり寒い中自転車をこいで15分、焼肉屋に着いた。オミクロンの影響もあるのかお昼時だが店内は空いていた。1人で来店するケースがよほど珍しいのか、案内してくれる店員は少し気の毒そうな顔をしていた。田舎では焼肉屋は家族でワイワイ行くものだと相場が決まっている。招かれざる客は奥のBox席に案内された。心なしか、ほっとする。

 

メニューを見ると、さすが「カルビを全面に出している焼肉屋」だけあってランチセットもカルビが含まれたものが多い。大きく分けると1,000円のセットと1,500円のセットがあり、ほぼ迷うことなく1,500円のセットを選んだ。しかもWカルビセットなので2種類のカルビが楽しめるという至極のセットである。マスクを付けているからか、3倍増しくらいに可愛く見える店員さんに胸を張って注文をした。田舎でランチに1,500円、躊躇なく選ぶとは只者ではない。という表情をしていた気がする。ついでに+100円の烏龍茶もセットでつけたことで、店員さんは焦りを隠せないでいた。1,600円、もはや都内のそこそこ美味しい焼き肉ランチと同額である。

 

注文を終えて、束の間の満足感を味わっているとなんと1分くらいでセットが出てきた。キムチ、スープ、サラダ。客がいないだけあって、今か今かと出番を待ち構えていた前座くんたちである。この時、Google Mapの評価が低いという事実と前座くんたちを見て感じた嫌な予感に襲われた。

 

キムチが、とても少なかったのだ。

 

焼肉に自信のある店は、キムチを蔑ろにしない。意外と、自家製とかでこだわる事すらあるのがキムチなのだ。しかし、1分で提供されたキムチは小指でも掬えそうなほど少量で、心なしか乾いていた。サラダはサラダでドレッシングがビタビタだった。念の為、ドレッシング増し増しと注文していないことを脳内で確認した。スープは、スープはまともだった。通常の前座くんだとワカメスープが卵スープなのだが、ちょっとテールスープの味がした。ちょっとだけだけど。

 

一通り前座を倒すと、肉とライスが運ばれてきた。どうやらライスはおかわりし放題らしく、誇らしげにその旨を伝えられた。しかし、私の視線は肉に注がれていた。なんか、ちょっと変だ。なんか、美味しい店の肉と見た目が違う。Wカルビは、薄いロースっぽいカルビといわゆる上カルビそれぞれ5切れほどだった。恐らく、大して焼肉にこだわりがない人間なら見落とすだろうが、サシが不自然だった。

 

気を取り直して、肉を焼く。慎重かつ、大胆に網に並べていく。油が溶け出し、ロースターで気化しジュッと煙が舞い上がる。確かに焼き肉を。焼き肉をしていた。

薄いカルビはすぐに焼けた。焼けたのだが、なんか変だ。ブニョっとしている。これを私は見たことがある。確かに見たことがあるのだが記憶を辿るとそこは焼肉屋ではなかった。松屋だった。松屋のカルビ定食。ブニョっとしていて、とりあえず肉食べれれば良いだろって感じで期待値だけ間違わなければそれなりにご飯が進む、そんな肉だった。

 

少し焦りながら、口に運ぶ。3種類準備しておいた、どのタレにつけたかはもう覚えていない。口に入る。噛む。ブニョっとした感触が舌に伝わる。味は、普通だった。ただ、松屋と大して変わらなかった。認めたくなかった。上カルビも焼けたので口に運ぶ。普通だった。多分、スーパーで売っているお肉の方が美味しい。少し冷静になっていたので、ちゃんと白米もかっこんだ。ちゃんと米は食べれる。どんな時でも、米は肉に合わせて踊ってくれる。万能なんだ。米は。

 

その後も、普通のお肉を堪能し、ちゃんとライスを食べ切ることができた。自慢のおかわりし放題は遠慮しておいた。それほどポテンシャルのある肉ではなかったため、ライスの気持ちも考えるとお代わりという選択肢はなかった。油で早くも胃もたれを感じながら、少し重い足取りでレジに行った。なかなか店員が来ない。手持ち無沙汰になり、レジ横のブドウ飴を思わず手に取る。普段なら、会計後にすすめられて、あ、どうしよう。あって言いながら手に取るブドウ飴を初めて自らの意志で手に取る。

 

会計が終わる。税込1,760円。30%還元と考えると大体1,200円。まあいいか。そんな気分で特に高揚感もなく会計を済ませる。そして、「ありがとうございました」という爽やかな店員の声かけを受け取る。あれ。なんかがおかしい。今日は29の日ではないか。金券はどうした。チラッとレジに貼ってある紙を見ると、金券については「ランチは除く」と書いていた。瞬間、全てを悟った私は慌てて、「ご馳走様でした」と言って、足早に立ち去った。

 

ランチに1,760円払って松屋を食べた私は、金券もらっても多分来なかったな。とポジティブに思いながら、子供の頃と変わってしまった自分の舌を少し恨みながら自転車に向かった。そして、思い出補正ほどあてにならないものはないな。と冷静に敗因を分析して、帰路に着くのだった。

 

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Wカルビ焼肉定食